とべない沈黙 1966年　監督：黒木和雄　 主演：加賀まりこ　平中実 衣裳：東京衣裳　衣裳(加賀まりこ)：中林洋子
蝶の化身が纏う夏のワンピース （物語） 北海道に住む少年（平中実）が捕まえた蝶はナガサキアゲハという北海道では生息するはずのない蝶だった。一方長崎ではナガサキアゲハの幼虫が人の体について東の方向に旅をしはじめた・・・。 前衛的色彩の濃い、黒木和雄の初の長編劇映画。戦後の日本各地の情景や世相を活写しながら、蝶の化身ともいえる加賀まりこの美しい存在感をフィーチャーした、幻想的な世界が繰り広げられている。 日本各地を縦断したロケは印象に残る。特に被爆地である長崎、そして広島。広島では原爆スラムも映され、また原爆追悼式のその日その場所で劇映画シーンをロケしているのが貴重。安保条約可決のニュースフィルムや戦車が走る東京の街などドキュメンタリーと劇映画シーンのファンタジックな映像が融けあっている不思議さ。各地でさまざまに化身する＝髪型や衣裳が変わる加賀まりこに注目。大阪のシーンでの意外な化身の仕方＜インパクト大＞にも、ぜひ。	加賀まりこの衣裳は中林洋子の手によるもの。広島のシーンでは細いリボンにシャーリングの細かい襟がついたノースリーブのワンピースを着ている。華奢な肩に鎖骨が美しく出て綺麗。小物はシックに黒いハンドバッグ。追悼式の雑踏の中、蜷川幸雄から追いかけられながら黒いハイヒールで逃げ歩く姿が美しい。
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