セクシー地帯 1960年　監督：石井輝男　主演：吉田輝雄　三原葉子
女スリはサブリナパンツで冒険する （物語） 貿易会社の社員吉岡（吉田輝雄）は部長にあずかった書類を女スリ（三原葉子）に盗まれ、翌日大阪の左遷を命じられる。その夜、吉岡は恋人のタイピスト玲子（三條魔子）に左遷の件を告げるが、彼女は吉岡に、部長のもとにいって取り消しをお願いすればいいと勧める。実は彼女は会社の特殊接待用の女性であり、部長の愛人でもあった。そしてその夜、彼女は殺され、その嫌疑は吉岡にかかり・・・・。 エログロ路線のキッチュさでカルト的人気を誇る石井輝男監督の作品であり、タイトルも「これもエログロ路線？」と一瞬思ってしまうのだが、それは大きな誤解。実は実は、おしゃれでスタイリッシュでクールなサスペンス映画であり、つくづく、イメージで映画を判断してはいけないと思わせられる。 まずはオープニングタイトルのかっこよさ！洋雑誌のコラージュに平岡精二カルテットのジャズが流れるタイトルにまず惚れる。 そして本編。銀座の街角をロケしたカメラワークのすばらしさに目を見張る。数寄屋橋と思しきボート場、夜の銀座の裏通りのバー。街を駆け抜ける三原葉子や吉田輝雄が風景にバッチリはまっている。東京駅の丸の内口、新橋駅の烏森口、浅草の歓楽街など、他の街のロケシーンも当時の街の香りが音や人波から漂ってくる。かなりゲリラ的にロケをしたんだろう、リアルな空気感に満ちている。ナゾの喫茶店やクロッキークラブなど、裏社会のムードも満載。 キャラクター設定もうまい。切迫した状況にもケロケロしている女スリ三原葉子のコケティッシュな魅力。吉田輝雄は顔がきりっとしているくせにところどころマヌケで、マスクとギャップがあるのがおかしい。（結局は三原葉子ひとりで事件を解決していたりしているのでまったくの役立たずである。）そんな2人のラブサスペンスといった趣もあり、純情な吉田輝雄と度胸の据わった三原葉子の組み合わせってのがいいかも。ラストシーンはちょっとキュン。 一番好きなのは、クロッキークラブのマークに気づいた吉田輝雄が、朝の銀座の裏通りを徘徊するシーン。このシーンのジャズナンバーと映像のリズムのマッチングにしびれる。至福のひととき。	三原葉子がコールガールになりすまして、ウインキーちゃん（実際はタカラのダッコちゃんである）を目印に東京駅で客と落ち合うシーン。 大きな花のモチーフのニットに、揃いのサブリナパンツ。子供服みたいなスタイルだが、彼女の無邪気さ大胆さとマッチしていて、かわいらしい。でも、派手だよな、絶対。 帽子と籠バックがおでかけっぽい風情。とんがったトゥの水玉のフラットパンプスもサブリナパンツによく合う。（ポケットはワキにあるんだけど、探りにくいのよ、ムフ。詳しくは映画を見てね）
銀座を徘徊する女スリの三原葉子。ハイネックに黒いスーツ。ハイネックの部分のボタン止めがくしゅくしゅとしていてかわいい。スーツも白い縁取りのボタンなしタイプで、大人っぽいモダンさが銀座の街にマッチ。ちょこんとのってる黒い帽子もマッチしている。ショウウインドウを眺めていると細川俊夫の刑事に声をかけられるシーンで、彼をだまくらかすところはユーモアがあって楽しいシーン。細川俊夫のポジションもラストの伏線になっているのがまたシャレてる。
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